●日本一大きいやかんの話

ともにこれ凡夫のみ…
『日本一大きいやかんの話』鑑賞。タイトルは、原発推進派も反対派も、やかんに喩えて仕組みを説明するから。高校で推進派と反対派に分かれて討議する授業があり、その議論が全くかみ合わない事に違和感を覚えたのが映画製作の動機。クラスの推進派と中立派と反対派の三人で、小遣いを出し合い機材を揃え、福島やアメリカにも取材に行った情景が収められていた。当事者にインタビューを重ねる度に、彼ら三人三様に考えが揺らいで行き、映画の着地点は、学べば学ぶほど何方も選べないという事であった。
高校時代、優柔不断な自分が嫌で、お祭りの行列の真ん中を横切ったりした。今から思えば、難しい判断を簡単にできる方がおかしいのかも知れない。17条憲法には「人皆心あり。心おのおのの執れることあり。かれ是とすれば、われ非とす。われ是とすれば、かれ非とす。われ必ずしも聖にあらず。かれかならずしも愚にあらず。ともにこれ凡夫のみ」とある。いつの間にか自分の正しさに囚われ、相手だけが間違っていると決めつけ、学ぶことを忘れている私。トホホ…
●映画情報
「何とか、原発賛成派と反対派の『橋渡し』をしたかった」
ドキュメンタリー映画「日本一大きいやかんの話」の監督を務めた、矢座孟之進(やざたけのしん)さん(17)は振り返る。東京都練馬区にある東京学芸大学附属国際中等教育学校の5年生(高校2年生)だ。
趣味はピアノで、映画製作の経験はゼロ。そんな矢座さんが映画を撮ろうと思ったのは、同校3年(中学3年)3学期の社会科の授業がきっかけだった。「原発」をテーマに、クラス約30人が「賛成派」と「反対派」に分かれて討論した。賛成派は具体的なデータに基づいてひたすら原発の必要性を説き、一方の反対派は東京電力福島第一原発事故を念頭に、福島に対する思いを語った。共通のゴールが見えず、討論は平行線をたどった。
「こういうディスカッションは初めてで、気持ち悪さを感じた。議論するにはまずお互いを理解しあうベースが必要だと思った」(矢座さん)
手法として、視覚的に訴える力のある映画を使うことにしたという。
そもそも矢座さんは、日本の厳しいエネルギー事情を鑑み、原発「賛成」の立場。映画をつくるにあたり、隔たりなく意見を採り入れたいと考え、「反対派」の羽仁高滉(はにたから)さん(17)と、「中立派」の土屋駿(しゅん)さん(17)、2人のクラスメートを仲間に入れた。
3人は4年(高校1年)の夏から本格的な取材に取りかかった。米国ミシガン州立大学が主催した研修に渡米して参加し、同大の天文物理学科助教授に取材したのを皮切りに、東京電力、フランス大使館、福島など全11カ所、推進派と反対派の両方を、休みを使って訪ね取材を重ねた。
課題研究なので予算はない。小遣いを削って旅費にあて、カメラや編集ソフトなど機材は「お年玉と誕生日にもらったお金を使った」(矢座さん)。
反対派だった羽仁さんは、東電への取材で、日本の電力不足を補うには原発が必要だという話を聞いたことで、賛成でも反対でもない「中立派」になった。
もともと中立派で原発にあまり関心がなかったという土屋さんは、福島で廃炉の状況を伝える活動をしている元東電社員から話を聞き、「反対」の意見も聞こうと思うようになった。
1年近くかけ完成した映画は、昨年末のNPO法人映画甲子園が主催した「高校生のためのeiga worldcup2019」で最優秀作品賞に選ばれた。
審査員の一人は、「時間と費用と知性を結集した今までにはないドキュメンタリー」と絶賛。別の審査員は「現代の世界が抱える大きな問題を正面切って精力的に取材した」と評した。
矢座さんは今、別のクラスメートと一緒に2作目の原発映画に取りかかっている。「前作では伝え切れなかったものがあった」からだ。
クラウドファンディングで約54万円を集め、マイクや三脚など機材を買った。先日は原発が立地する新潟県柏崎市に行き、吹雪の中、カメラを回したと楽しそうに話す。
「10代の若年層に、原発やエネルギー問題は僕たち一人一人が考えなくてはいけない問題だと、訴えたい」
※AERA 2020年3月9日号より
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