●日本一大きい空気いすの話

執着を離れる…
『日本一大きいやかんの話』の続編、『日本一大きい空気いすの話』鑑賞。原発は「政府や電力会社が能動的に動かしているのではなく、電気を使う自分もシステムの一部」という視座から、人間四人が絶妙なバランスで支え合う「空気いす」になぞらえたタイトル。
前作の「対話のためには自分の立場を離れる必要がある」という問題提起から映画は、何物にも影響を受けない純粋な自分の意見は存在するのか→自分とは何なのか→自分という執着を離れることは可能なのかと、哲学的な方向に展開していきます。最後は、無作為な単語を入力したら答えてくれる原発AIプログラムを制作して、四人の高校生が空気椅子の姿勢を保ったまま問答をするという、斜め上を行くラストでした。
さて、ご門徒さんから、お釈迦様のAIが開発されている旨の新聞記事を頂きました。悩み事を相談すると、入力されている膨大な仏典から答えを検索、組み立てて、仏典の言葉と併記して、現代文で回答してくれる優れものだそうです。お寺もお葬式もバーチャルで可能。もう住職いらん時代の到来か。トホホ…
●映画情報
東京学芸大付属国際中等教育学校(東京都練馬区)を今春卒業した19歳の矢座孟之進(やざ・たけのしん)さんが、原発を巡る「責任」について考えるドキュメンタリー映画を製作した。クラウドファンディングで集めた約50万円を使って国内各地を飛び回り、工学者や原発事故捜査に詳しい元検事、電力会社の幹部、原発立地自治体の議員らにインタビュー。「議論を始めるには、まず賛否の対立から脱却しなければならない」との結論を導き出した。(共同通信=中山拓郎)
▽橋渡し
映画のタイトルは「日本一大きい空気いすの話」。国、電力会社とその株主、消費者など、多くの人が責任を負うべき原発を、4人が絶妙なバランスで支え合う「空気いす」に見立てた。専門家へのインタビューに加え、矢座さんと友人3人が空気いすの状態で「責任とは何か」「対話とは何か」と葛藤する様子も収録した。2020年6月までに完成させる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で約1年延びた。
高校1年の時に第1弾を製作しており、今作はその続編に当たる。原発の仕組みや歴史を取り上げた社会科の授業が、第1弾製作のきっかけだった。原発稼働の是非をテーマにしたディスカッションで、賛成派が具体的なデータに基づき「必要だ」と訴えた。反対派は東京電力福島第1原発事故を念頭にリスクの大きさを強調。「最後までかみ合わず、いらいらした。正しい知識を提供することで、賛成派と反対派の橋渡しの役割を果たしたい」と映画作りを思いついた。
第1弾の題名は「日本一大きいやかんの話」。蒸気の力で電気を起こす原発を「やかん」と表現した。矢座さん自身は「賛成寄りの中立」だったが、福島県浪江町の帰還困難区域を取材したことで「葛藤が生まれた」と振り返る。農業と太陽光発電を同時に実現する「ソーラーシェアリング」の現場で「『原発反対』と声高に訴えなくても、原発が不要な社会を自然につくっていけばいい」と諭されたことも、変化のきっかけになったという。
前作は、高校生を対象にした映画の全国コンクール「高校生のためのeiga worldcup2019」(NPO法人映画甲子園主催)で最優秀作品賞に選ばれ、「福島映像祭」や「江古田映画祭」など各地のイベントで上映の機会も得た。
▽パーツ
高校生を中心とした若者世代には「原発への関心が高まった」「自分の知識不足を痛感させられた」などと好意的に受け止められた。一方で、反対派と呼ばれる人たちからは「事故の悲惨さに向き合っていない」「リスクへの理解が不十分だ」と批判的な意見も多く寄せられた。こうした人の多くは既に十分な知識を持ち合わせており「知識量の差ではなく、対立の構図が議論を難しくしている」と痛感。これが第2弾製作の大きな原動力となった。
「先入観を持たずに見てほしい」との思いから、インタビューに応じた専門家の氏名や肩書はあえて伏せた。原発を推進していても負の部分にもしっかり目を向けていたり、反対派でも「原発はなくせない」と理解していたり、映画製作を通じて「実は賛否の線引きは曖昧なのではないか」とも実感した。
どんな立場でも「原発というシステムのパーツ」にすぎないとし、このことを理解してこそ議論のスタートラインに立てると総括した。
▽迷い
原発事故捜査に詳しい元京都地検検事正の古川元晴弁護士は新聞報道で「日本一大きいやかんの話」を知り、鑑賞した。「政治問題化し、議論の仕方が難しい原発を取り上げていることにまず驚いた。でも、しっかり取材し、その難しいテーマに食らいついていて、日本の高校生とは思えなかった」と感銘を受け、東京電力福島第1原発事故に関する自著を矢座さんにプレゼントした。
続編では出演を果たし、「迷いがあるように見受けられたが、簡単に割り切らないことも大事。今後が楽しみだ」と期待を込めた。
矢座さんは8月末に渡米し、9月からは柳井正財団の奨学生としてハーバード大に通う。前作のように上映会や交流会を頻繁に開くことはできないが、映画は動画投稿サイト「ユーチューブ」上で公開している。「日々電気を使う“普通の人”にこそ見てもらいたい。いろいろなところで、どんどん上映してほしい」と呼び掛けている。
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