
『仏前結婚式』というご縁

『仏前結婚式というご縁』
お寺といえば、ご法事やお葬式をする場所――そんなイメージをお持ちの方も多いと思います。確かに法事や葬儀が中心ではありますが、実は明顕寺でもこれまでに2度(私自身の分も入れると3度)、仏前結婚式 が行われました。
仏前結婚式は、阿弥陀さまやご先祖に見守られ、新たな人生の門出を報告し、誓いを立てる儀式です。流れを簡単にご紹介すると、
1.短い読経
2.司婚者(仏前式の導師)の表白(阿弥陀様へのご報告)
3.司婚の言葉(結婚の意義と願い)
4.誓いの言葉
例:「私たちは、今日までお育ていただいた方々のご恩を忘れず、み仏の教えを導きとし、お互いに 尊敬し合い、清らかな家庭を営むことを誓います」
5.結婚成立の宣言
6.念珠授与(指輪交換に相当)
7.焼香・献花
8.法話
9.三三九度・親族交杯
という具合です。ちなみに、誓いのキスはありません(笑)。
実際にお勤めさせていただいた折には、新郎新婦やご親族の方から「厳かで良かった」「これはこれでありかも」といった感想をいただいています。華やかさは控えめですが、仏さまの前で静かに手を合わせる式は、心に残るものです。
私自身の結婚式では、師匠に司婚者をお願いしました。大変厳しい方でしたが、誓いの言葉の後に
「先ほど、お互いに尊敬し合いと誓われましたが、これからはむしろ、お互いにさげすみ合いたくなる時もあるでしょう。だからこそ、み仏の導きを忘れずに。」
と、ご法話をいただきました。親戚からは「結婚式らしくない」と不評の声も出ましたが、師匠らしいお話でした。
式の最後に師匠が「良いところも悪いところも、どうか引き受けてやってください」と深々と頭を下げてくださった姿が、今も心に残っています。
ちなみに、私が司婚者を務める場合は、もう少しソフトなお話を心がけていますので、ご安心ください。
明顕寺(兵庫県丹波市柏原町)では、仏前結婚式をはじめ、法要、葬儀、納骨、永代供養、墓じまい等のご相談も承っております。お寺だからこそできる人生の節目のサポートを、これからも大切にしてまいります。どうぞお気軽にお問い合わせください。
さて、意外と知られていませんが、もともと日本には今のような「結婚式」という形はなかったようです。道具入れ・嫁入り・祝言という行事がそれぞれあり、仏間で執り行われることが多かったそうです。そこには仏さまやご先祖への感謝と報告の意味合いも込められていました。
現在の仏前式が儀式として確立したのは明治時代、神前式は大正天皇のご成婚がきっかけ、キリスト教式は1960年代に芸能人が教会式を取り入れたのが広まりの始まりだそうです。その後、80年代にはダイアナ妃のロイヤルウェディングが人気に拍車をかけたとも言われます。
そう考えると、結婚式の形は時代によって移り変わってきたのですね。
ちなみに私、師匠に導かれて結婚して34年目に突入しております。時代は変わりましたが、あの時のご法話の通りの日々を歩んでおります。トホホ…。