お寺からのお知らせやカレンダーで「報恩講(ほうおんこう)」という文字を目にして、「これは一体どんな行事なのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。あるいは、ご家族やご親戚から「もうすぐ報恩講だから、お寺にお参りに行きましょう」と誘われたことがあるかもしれません。
こんにちは。兵庫県丹波市の真宗大谷派 明顕寺(みょうけんじ)です。
「報恩講」は、私たち浄土真宗にとっては、一年で最も大切にしている、特別な法要です。しかし、その言葉の響きから、少し難しく感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、この「報恩講とは」という疑問に、できるだけ分かりやすくお答えしたいと思います。
【結論】報恩講とは「親鸞聖人への、感謝の集い」です
一言で申し上げるならば、報恩講とは**「浄土真宗の教えを開かれた、宗祖・親鸞聖人(しんらんしょうにん)のご命日の法要」であり、そのご苦労とご恩に「報いる(感謝する)」**ための集いです。
親鸞聖人は、11月28日(旧暦)にお亡くなりになりました。そのため、全国の浄土真宗の寺院では、このご命日の前後に報恩講を執り行い、私たちが阿弥陀如来(あみだにょらい)の教えに出会えたことへの、感謝の気持ちを新たにするのです。
私たちにとってのお正月やお盆のように、浄土真宗の門徒にとっては、一年で最も重要で、心の拠り所となる一日だと言えるでしょう。
なぜ「報恩」? 親鸞聖人が私たちに伝えたかったこと
では、私たちは親鸞聖人の「何」に感謝(報恩)するのでしょうか。
それは、「どんな人でも、ありのままで、阿弥陀如来の光の中に救われていく」という、希望の教えを伝えてくださったことです。
親鸞聖人が生きた鎌倉時代は、厳しい修行を積んだ者や、特別な身分の者しか救われない、という考え方が主流でした。しかし親鸞聖人は、そうした考え方に疑問を抱き、「私たちはみな、悩みや弱さを抱えた凡夫(ぼんぶ)である。そんな私たちだからこそ、阿弥陀如来は決して見捨てることはない」と説かれました。
この教えは、当時、日々の生活に苦しむ多くの人々にとって、大きな心の支えとなりました。報恩講は、この救いの教えを、命がけで私たちに届けてくださった親鸞聖人のご生涯を偲び、「ありがとうございます」と手を合わせるための、大切な機会なのです。
報恩講では、具体的に何をするの?
明顕寺の報恩講では、主に以下のようなことを行います。
- 特別な荘厳(しょうごん): 本堂は、報恩講のための特別な飾り付けがなされ、普段とは異なる厳かで華やかな雰囲気に包まれます。
- お勤め(おつとめ): 住職を導師として、集まった皆さんと共に、親鸞聖人が著された『正信偈(しょうしんげ)』などのお経を読み上げます。
- 法話(ほうわ): 住職が、親鸞聖人の教えや、仏教の考え方を、私たちの日常生活に引き寄せながら、分かりやすくお話しします。難解な仏教用語を並べるのではなく、皆様の心に届く言葉でお伝えすることを大切にしています。
- お斎(おとき): 法要の後には、おとき(お食事)を皆でいただくこともあります。同じ時間を共有し、語り合うことで、ご門徒同士の交流も深まります。
どなたでも、お気軽にお参りください
報恩講は、明顕寺の檀家様や門徒様だけのものではありません。
「親鸞聖人の教えに、少し興味がある」 「一度、お寺の大きな行事に参加してみたい」 「住職の法話を聞いてみたい」
このようなお気持ちをお持ちの方であれば、どなたでも、全くご遠慮なくご参加いただけます。 服装も普段着で構いませんし、持ち物も、もしお持ちでしたらお念珠(お数珠)をご持参いただく程度で結構です。参加費なども特にいただいておりません(お気持ちとしてお布施をいただくことはございます)。
一年で最も丁寧にお迎えする、お寺の「感謝祭」のような日です。ぜひ、この機会に明顕寺の門をくぐってみてください。きっと、温かい気持ちになってお帰りいただけることと思います。